ナナマタの夜

 今日は丸一日休み。毎日休みだけどねっ。つい数か月前まではガツガツと働いていたんだよなー。やはり俺には一度こういう時間が必要だったんだと思う。仕事とは何なのか、どうあるべきなのかってのを冷静に考えられるようになる。今現在は以前とは比べ物にならないくらい素晴らしい仕事ができているのはこの旅のおかげあああああああああ俺はもうとんでもなくひどい下痢ああああああああ。ねえ、いつまで続くの?

 ところで、お世話になっているインドの家族に何か贈り物を献上しようと思い、日本にいろいろと荷物を頼んだのですよ。もう1ヶ月くらい前に。でも全く届く気配がないの。俺の荷物もあるから早く受け取りたいんだけどね。どうなってんの、インドの郵便事情。この地にいる間に届かない場合は郵便局留しかねえかな。デリーかコルカタのGPOに送ってもらう。今いるシタールガンジを離れた後は、ダラムサラという町に行って瞑想コースを受ける予定になっている。その間届くようならデリーへ。それ以降ならコルカタに転送する形になるかな。

 たまりにたまった洗濯物をやっつける。自分でやりましたよ。Shelley家には家政婦さんがいて、掃除と洗濯をやっている。カプール家にもいました。ところで下痢の話ばかりで大変恐縮ですが、ほんとに深刻。なんとかしたい。もう6日目。発熱や吐き気はないからただの食いすぎと食の変化が原因だと思うんだけど。

 さて、丸一日休みだと思っていたら、ナナマタにいくという予定が入っていた。ナナマタとはこの町の中にある地区のことで、ムルジさんの家がある場所。Nanak-mataと書くのだが、その名の通り、グル・ナーナク(シク教の開祖)にちなんでつけられている。グル・ナーナクが出生した地というわけではないが、それほど熱心なシク教徒が多いということなのだろうか。実際この町にはターバン姿の男がたくさんいる。
 出発までゴータム(シェリー家の息子ね)とクリケットで遊ぶ。はじめてやったんだけどおもしろかったな。打ち方とか投げ方とか野球と全然違うのな。いまだにルールがわからないんだけど。

 今日はナナマタに泊まるようです。ムルジさん家族に招かれて。ムルジさんのお父さん(パパジー)が迎えに来てくれて、バスに乗ってナナマタにいく。15分くらいかな。妻ハニーと娘アニーが笑顔で迎えてくれた。アニーと住宅の隣にある学校跡に行き、俺たちは屋上に行ってずっと外の景色を、サンセットを眺めていた。時間がゆっくりと平和に流れることを実感する。はるかに広がる地平線が夕日で黄金に染まる。

 日は落ちた。家に戻り、間もなく恒例の停電。電気をつけた途端停電ですわ。長い停電だったわ。しかし星がとてもきれい。満天の星空とはこういうことをいうんだな。アニーと、一番光っている星を探す。

 ムルジさんとバイクでマルケットに行く。彼の愛車はBajajの125CC。俺でも運転できるぜ。町中停電しているのだが、いくつかの店ではインバーターを使い、かろうじて明かりを維持している。俺はペットボトルの飲料水(今までは井戸水)と電池と、アニーとメヘクのためにチョコレート菓子を2つ買う。そしてヒンドゥーテンプルに立ち寄る。額におまじないの朱色の粉を塗ってもらう。ちょうど結婚の儀をやっていたので見学する。このテンプルにはたくさんの神様人形がある。ハヌマーン、ドゥルガー、クリシュナなどなど。

 家に帰り、アニーにチョコレートをわたす。遠慮しそうだったので、わたしてすぐ逃げる。まもなくアニーが俺のもとにやってくる。

「ひとつはシンのよ!」
「俺はこのチョコが嫌いなんだ。だからこれはアニーたちが食べるんだ」
「うーん…。わかった…」

 少々解せない感じではあったが納得したようだ。しばらくしてベッドに呼ばれる。家族4人は一緒に寝ている巨大なベッドで、みんなでくつろぐ場でもある。いつもながら人の家のベッドにのぼってくつろぐのは抵抗がある。だってさ、のぼって座ってるとさ、「寝転がれ」って言われるんだもん。アニーはチョコの袋を開けており、ああ、食べてくれたんだな、と思っていると、

「ねえ、ひとつ食べてみて」
「ありがとう。ムシャムシャ」
「どう?おいしい?」
「ああ、おいしいよ!」
「じゃあこれはあなたが食べて!」

 やられた。なんて賢い子だ。袋は開けていたが、アニーは食べてはいなかった。俺を試したのだ。そんなに遠慮することないのにさーもう。本来なら、俺はもっといろんなことをしなければいけない。もてなしてもらってばかりでそれが逆にストレスに変わる。かといって金ですべてを解決したくはない。そういったジレンマが俺の下痢を悪化させている原因の一つだと思っている。しかしながらここまでの心づくし、小さい子どもですらわきまえているもてなす心には驚かされる。俺はもらったチョコレートを半分取り、半分は姉妹に受け取らせた。

 彼らとの時間も限られている。必ず別れもある。俺との出会いをほんとに大事にしてくれているのだろうか、ノートに連絡先とメッセージを書いてほしいというので、思いのたけを書く。いきなり書けと言われてもスラスラ英文なんか書けないけど、気持ちの問題ですよね。

 夕食は11時ころいただいた。なんと俺のために魚カレーを作ってくれた。ムルジさんは魚や卵を食べるし酒も飲む。少しだけどね。しかし他の家族は完全なベジタリアンである。調理をしたのはムルジさんで、ハニーは生き物は絶対に調理しない。魚のにおいをかぎつけて飼い犬も騒ぎ出す。大変うまかったです。スパイシーで。

 俺の寝る場所は学校跡。ここでパパジーも寝ている。疲れ果てていたのでもうぐっすり。やはり気を使う生活が続いているため、疲労がたまる。インドでは家族はいつでも一緒。日本とは大きく違う気がする。根本的に家族愛がある。我々はものにあふれすぎていて、大切なものを見失っているのかもしれない。ものや娯楽なんかなくていい。必要ではない。そしてそれらを知る必要もない。子どもをいい子に育てるのは教育なんかじゃない、愛情だ。親が本気の愛情を注いでいれば、それで十分なんだよね。

 俺はとても貴重なことを学んでいる。インドの家族の中に入り、いろいろなものを見た。そして生涯にわたるであろう、大切な人たちに出会った。俺は忘れない。みんなが俺に語りかけ、そして笑顔と愛をくれたこと。みんな素敵な笑顔だ。心からの笑顔だ。

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