ひとりでいること

 バラナシ滞在ももうすぐ終わりなので、やっとボートに乗ります。ガンジス川クルージングです。今までまったく興味はなかったものの、そろそろバラナシを去るわけだし、せっかくだから。ボートはたくさんあります。それぞれにこぎ手がついており、個人商売をやっております。もちろんボートは乗り合い。沈まない程度にね。
 俺のほかに乗客は4人。聞くと、4人は台湾から観光で来たとのこと。上流に向けて出発。川側から見るバラナシはいいもんですな。まるで湖に町が浮いているかのように神秘的。ヒンズー建築群がすばらしすぎる。なぜこれが世界遺産でないのかまったく理解ができない。されたらされたでつまんないんだけどね。それにしても、雨期のガンジス川はとにかく広大。果てが見えないほど。そしてこれにて、インド最後の観光が終わりました。

 その後、ガートをフラフラしていると、暇そうなインド人のおじさんからビーリーをもらった。

 「一本どうだ。吸うか?」
 「おっ、ビーリー。ありがとう」 プハー
 「じゃあ5ルピーな」

 ふざけんなコラ(笑)。だが、これは悪意でも冗談でもない。インドでタダは絶対にない。もちろん俺は金など払わなかったが。
 それにしても、ここのところ雨がほとんど降っていない。雨期なのにおかしいな。宿のボスに聞いてみた。

 「最近雨降らないねー」
 「今の時期は、一時的に降らなんだよ。あと10日もすればまた降り出す。今度は大規模にな」

 まじですか。でもその頃にはもうバラナシにはいない。そういえば師匠も言っていたな。今南部が大雨と洪水で大変なことになっていると。あと10日くらいでそのモンスーンがやってくるだろう、と。牛どもは相変わらずガンガーで気持ちよさそうに行水している。

 前に書いたとおり、バラナシをうろつく牛は野良牛ではなく、すべて飼い主がおります。餌をろくに与えず放牧(?)させ、ゴミを食わせているため、ミルクの質が悪い(笑)。一般的に流通しているミルクは、バッファローミルク、つまり水牛の乳らしい。牛乳は高いんだって。ちなみにヤギのミルクは希少でめったに流通しないらしい。牛同様、そこらじゅうにヤギがいるんだけどなー。そのヤギたちも、街中の貼紙をガリガリと食っているのできっとミルクの質はよくないだろう。

 シタール教室、残り3日となりました。ここで新たに生徒が入りました。またしても韓国人。今度は女の子です。有名な韓国人宿が近くにあるというのも原因かもしれない。相変わらず兄弟弟子のソルとソンヒは下手くそで、ロクに練習もしてないようなので上達もせず、師匠は半分さじを投げてやる気をなくしている(笑)。あいつらはダメだ・・、とよく俺にぼやいていた。
 わたくしはというと、もうすぐレッスン終了になるので、師匠にお礼の気持ちを込めて、酒をプレゼントすることにした。不良の師匠は酒が好きらしいので。ここバラナシはウッタル・プラデーシュ州にあるのだが、この州は酒が高い。ウイスキーを買った。あくまでもメモリアルなので、俺の証明写真を丸く切ってラベルに貼りつけてやった。

 街中で、偶然知り合いに再会することがある。別の国を旅していた時に仲良くなった日本人で、酒飲んだり大富豪やったりして遊んでいた人。そしてさらにおもしろいのが、彼の連れの男。その男は、かつてチェンナイで会い、俺にプリ―の日本人宿を猛烈にプッシュしてきた男だった。なんという狭い社会だろう。2人とも、変わり果てた僕の姿に若干引いておりました。長髪と髭はインド人よけにはなるけれど、同時に同胞である日本人も寄せ付けなくなってしまう。ほどほどにしないといけない。いざという時、知り合いや仲間はいた方がいいに決まっている。それはよくわかってはいるんだけど、ひとりでいることに強いこだわりがある。
 よく行っていたインターネットカフェのインド人に言われた。

 「ユーは珍しい日本人だよね」
 「どこが」
 「いつもひとりだよね。他の人と一緒に行動しないじゃん」

 しないんじゃなくて、できないだけなのかもしれない。ツッパリだからさ。
 ひとりにこだわるには理由があった。他人と一緒にいると、どうしても流されてしまう。自分を見失う。自分を発見したい!などとかっこつけるわけではないけれど、せっかくの一人旅なんだから、できるだけ人の影響は受けたくない。自分で実際に見聞きし、感じて、考えて、行動をしたかった。自分自身を改めて知りたいということだ。自分を知るには、慣れた環境から脱出するしかないと思っている。そして成長するためにも、慣れないことをやってみるのが一番手っ取り早いとも思っている。
 本当の自分を知ることができるのは自分だけ。人の影響を大いに受けるのはかまわないけれど、それも、自分を知った上でないと、ただのあやつり人形のような存在にしかならないだろう。社会から、他人から都合のいいだけの存在。生きててもいいけど誰でも代わりになれるような存在。死んでしまったらすぐに忘れられてしまうような存在。
 いつか人生は終わるけれど、僕は人生をかけて唯一の自分を証明して死にたい。

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