インド人の落とし方

 インドを旅していると、腹が立つことが多いんです。とくにリキシャーの値段交渉とかね。でも力押しってのはあまり効果はないと思っている。お互いいやな気持になるじゃないですか。怒鳴りつけてメチャメチャけんか腰に値下げさせて満足してる人もいるけど、どうかと思う。意思表示をきっぱりするのとけんか腰になるのは違うから。

 最初の頃は僕も常にけんかしてました。相手の言い分が話にならないくらいアホだし、暑くてイライラするし。でもある時にやり方を変えました。それは、相手の目をしっかり見て、主張すること。目を見るときには睨むのではなく、柔和なかんじで、慈悲と平和をたたえた目で見つめます。そうすると、ほぼ必ず折れてくれます。不思議ですよね。目は口ほどにものをいう、というのは本当で、目ですべてが伝わります。この方法を習得してからは、言い合いになることなく、サラサラと交渉ができるようになりました。

 当然ですが、インド人は喧嘩をしたいわけではない。ちょっと調子に乗って金をせびってしまうだけで、平和な人種だ。とても明るくて家族思いで他人にも優しい人たちだ。我々がけんかをふっかけるから悪いのではなかろうか。相手は最初からけんかなど売ってはいない。

 旅から帰って友人知人に「オレ、もーインドじゃケンカばっかだったよ!あいつらマジでクソ」なんて言うより、「オレ、たくさんのインド人とグッド・コミュニケーションしてきたよ!」っと言う方がよっぽど素敵じゃありませんか? 一人前の男を気取るなら、目で語れなければならない。