ジャイサルメールを出てジョードプルに向かう夜行列車。連日の移動でお疲れの俺は深い眠りの中にいた。ふと目が覚めると、何やら周囲がざわついている。何事か。ジョードプルについてました。あ~、目覚ましアラームに気がつかなかったわ。終点がジョードプルで本当によかった。
新しい町に来ると、まずは宿を押さえなければならない。ジャイプルで会った日本人から、ジョードプルのオススメ宿を教えてもらったのですが、それがかなりの坂を登った所なんだよね。地図で確認したところ、とても歩ける距離ではない。いや、歩こうと思えば歩けるけど、バックパック背負ってるからキツイんだ。歩けないとなるとね、リキシャーなわけですよ。毎度のことですが、リキシャのことを考えると気が重くなる。貴様らサラリーマンの日曜夜よりもよっぽど気が重いよ。
ジョードプル駅を出るとおなじみのリキシャー軍団が待ち構える。旅行者の天敵だ。でもジャイプルの例もあるし、すべてのリキシャワーラーが悪とは限らない。ジョードプルの連中はひょっとしたらいい奴らかも知れない。我先にと俺に向かって殺到してくるリキシャワーラーども。俺は一番乗りのおっさんと交渉に入る。
「おはよう、リキシャードライバーのおっさん♪」
「おはよう!どこに行く?ホテルか?いいところ知ってるぜ!」
「いや、あのね…」
「メヘランガル・フォートだろう。そうだな!?」
「いや、違うのよ…」
「わかった!ジャスワン・タダだろ。よしレッツゴー!」
「あの…」
「乗れ!さあ乗れ!」
「いい加減にしろこのクソボケ!…あのね、郵便局に行きたいんですよ」
「郵便局か、遠いぞ。すっっっごく遠いぞ!」
早朝のジョードプルはまだ人出が少ない。助けてくれる人がいない。というか、「なんでアイツ吠えられてんの?」ってかんじで静観されてる。インドには犬に襲われるような間抜けなどいないのだ。恐怖に怯えた俺は、近くにいたオートリキシャーに助けを求める。が、リキシャードライバーは中で熟睡しておられました。ドライバーをたたき起こし、とりあえず乗せてもらう。
「おい、なんでお前は犬にほえられてるんだ?」
ほらね。
「それよりもこの宿に連れてってよ、ここ、わかる?」
「OK、まかせろ」
「ちょっと待て、おいくらかしら…?」
「60Rs」
「こんだけの距離で60はないだろう。30Rsでよろしく」
「50Rs」
「うーん、40Rsでどうだ」
「わかった、40Rsでいいだろう。ところでもう1回地図見せてくれ」
「さっき、OK,まかせろって言ってただろ…」
「あー、はいはい、ここね、じゃ、発進~♪」
大丈夫かしら。まあ目指す宿はガイドブックにも載ってるくらいの宿だから大丈夫だろう。しかし、このドライバーはあちこちで停車、その辺の人に道を聞きまくり。…全然わかってねえ! あちこち迷っては迂回し、ほうほうの体で何とか宿に到着。60Rs分は走ったね。ただこのリキシャワーラー、最後の最後で男前を発揮。目的の宿はすさまじい急斜面の上に建っているのだが、さすがに2人乗りのオートリキシャーじゃ無理だろうから、坂の手前で降りようとしたのです。すると、
「かまわん。乗っていろ…」
そして急加速。この男プロだ。ちゃんと宿の前まで行ってくれる!決して自分の商売に妥協しない姿、かっこいい! しかし力及ばすリキシャーは途中で停止。やっぱだめじゃーーーーーん!
部屋を確認したところ、ダブルルームしか空いてなくて、シングルはリフォーム中とのこと。本当か~?まあオフシーズンだからね。。ダブルは高い。320Rsだって。でも少しごねたら150Rsに大幅値下げしてくれました。この宿を推薦してくれた日本人青年が、ここのスタッフはすごくいいよ!と言ってた。たしかによかったです。女性スタッフで肝っ玉母ちゃん的で。部屋はとても広くて清潔。高台にあるから風通しも抜群で、ホットシャワーもあるの。しかも部屋を出るとテラスになってて、そこからブルーシティが一望できるの。このクオリティで150Rsは大変安い。
観光といえばすぐ背後にそびえたつメヘランガル・フォートなんだけど、入場料250Rsと聞いて行くのをやめる。何度も言ってることですが、観光地や食いものには基本的に興味がない。「観光旅行は老後にするもの」というのがアタイの持論なのです。今しかできないことをやろうぜ。それに快適な宿を確保できたことだし、ゆっくり休養したかった。たまにはのんびりしないとね。