砂漠の国ジャイサルメール

 ジャイプルからジャイサルメールに向かう列車の中。深い深い眠りであった。到着は13時の予定。同じボックスの人たちは全員降りたようで俺一人だけ。外の景色は見事に砂漠。砂漠といってもいわゆる砂丘ではない。殺伐とした不毛の大地。緑はほとんどなく、あるのは砂ばかり。ラクダの姿もちらほら見かける。列車はほぼ定刻通りにジャイサルメールに到着する。観光地ではが田舎町のため、駅は小さい。

 ここジャイサルメールは砂漠のど真ん中に存在する城塞都市である。12世紀に当時の王が築いた城塞都市はまだまだ現役。そして土地柄その気温の高さは尋常ではないとのこと。先の予定もあることだし、こんなクソ暑いところに滞在する気はまったくないため、夜には次の町へ移動する予定。

 ※写真註:人がいないインド!
 

 宿をとらないためバックパックが邪魔になる。そのような場合は駅のクロークルームで荷物を預かってもらえばよいのです。10Rs程度だったと思う。ちなみに、カギがかかっていないと預かってくれない。

 城塞に行くためリキシャをつかまえないと。いつもいつも憂鬱になる。これさえなければインドは最高の国なんだけどな。無駄な交渉で時間をロスするのが一番嫌い。例によって、いや、いつも以上に熱烈なリキシャ軍団の勧誘。酷暑期のジャイサルメールを訪れるようなキチガイはそういないから奴らも必死。俺は手に持っていたビスケットを配布し、追い払うことに成功。お前ら子どもかよ…。

 リキシャをひとつ確保し、城塞に向かう。 …暑い。ちょっとまって、“暑い”ではない。熱い!! 強烈な熱さ!うおおおおおおおおおおおおお熱いいいいいいいいいいいいいい俺は即座に命の危機を感じ、夕方まで休息をとる判断をする。天気予報によると、この日の気温は50℃とのこと。こんな中歩いていたら間違いなく死ぬ。熱い盛りの午後。城塞近くのアマール・サガル湖という名の人工池の木陰に向かう。町は人通りが少なく、全体的に静か。インド特有の喧騒がない。ジャイサルメールのように気温が高くなる場所では、あまりの熱さに仕事にならないため、みんな家の中で寝ているんだよね。動物たちもだるそうに寝ている。日中は社会活動が止まっている。

 貯水池は立派な歴史建造物に囲まれる形で周囲には樹木も多いため、格好の避暑地である。風も気持ちよく吹き抜けるのよ。もっとも、無風だったら日陰とはいえひからびていただろう。先日トレードした小説を読みながら、じっと動かず夕暮れを待つ。本を読み終えたとき、まだ16時。まだまだ絶好調に熱い。近くの売店で何か飲もうか。しかし売店には人影なし。奥の方を覗き込むと、店の主人は寝ていた。ほら、こんな町なの。客もいないし。何度も呼びかけて叩き起こす。

 さすがにもうじっとしているのも我慢の限界。熱くて死にそうだけど城塞に行く。どうやったらこの熱さを貴様らにお伝えすることができるのでしょうか。それだけが残念でならない。
 フォートの門をくぐるとそこは別世界。RPGの世界そのもの。高い城壁に囲われた狭い路地には人々が普通に生活している。牛や犬や豚やイノシシなどの動物も普通に生活している。この城塞はそのまま町(城下町ってかんじ)となっているため、特に入場料はなし。メインは高所に位置する城部分。店もたくさんある。砲台もあるし展望台もある。ちなみに店のほとんどは熱さのせいでCLOSE。かろうじて開いていた食堂で飯を食いつつ、水を買う。お金を渡すと、釣りが足りないからといってもう1本水をつけやがった。もうテキトーなんだからっ。水2本持ち歩くって、重いんだよ。

 熱くてたまらないけどおもしろい町なのであちこち探検。人出が少なくて移動しやすい。自由にあちこち行ける楽しさ。テキトーに入った路地の先は行き止まりか、さらに道が分かれるか、民家があるか、牛がいるか、まったく予想ができないところが楽しい。

 そろそろサンセット。サンセットと城塞をきれいに一望できるポイントがあるということで行ってまいりました。小さな町なんだけど道が迷路のようで、そこら中の人に聞きながらポイントを目指す。崖をよじ登り、なんとかサンセットビューポイントに到着。城とその下に広がる町を一望できる。遠目で見ると、本当に砂漠の真ん中にある異様な町。サンセットが砂の国を照らし、金色に輝く。ゴールドシティと呼ばれる所以ですね。こういう景色に出会い感動するとき、旅に出てよかったと心から思う。壮大な光景を見ると、非現実感いっぱいになり、楽しいような悲しいような、不安なような勇気が出るような、なんともいえない新しい感覚が生まれる。この感覚が旅の醍醐味なのかもしれない。新しい刺激を受けることってこの歳になるとなかなかない。素敵な気持ちでいっぱいです。

 景色を満喫してようやく崖を降りる。崖というより実は城壁なんだけどね。城壁を下りるとそこには世にも恐ろしい事態がまっていた。野犬軍団である。もう犬が超苦手な俺。死すら覚悟したぜ。遠くから俺に向かって吠えてるんだけどさ、俺の行き先は犬軍団の向こう側。通路は狭く、犬の縄張りを避けては通れない。この後俺がどうしたかという話は旅のコラム「犬」で書いたとおり、石投げ作戦でなんとか乗り切ったわけだが、2重の包囲網は本当に怖かった。包囲網を抜けて人の姿を確認した時の安堵感といったらなかった。だがその連中は大変なバカ者どもでした。

「おい、お前のバックパック、クロークルームにあるやつな、開けられてたぜ!」
「…ほほう。そうかね」
「俺がクロークルームのボスだ。こっちに来いよな」
「明日行ってやるよ、バーーーーカ」

 バカどもは無視するに限るが、どうして俺の荷物がクロークルームに預けてあることを知っているのだろうか。ネットカフェに入りメールチェック。日本からインドの家族たちに送った荷物がようやく届いたみたい。。遅過ぎだけど無事届いてよかった。2カ月近くかかったことになるな。
 ネットカフェで2本の水を冷蔵庫で冷やしてもらう。親切なネットカフェの主人でした。インド人にやさしくされると戸惑うけどとてもうれしい。とはいえ、野犬軍団により心に深い傷を負った俺は豪勢な晩メシを食らう決意をした。インドで最初で最後の高級レストラン。いつもはメシの予算は20~30Rsなのですが、今夜だけは100Rsのメシ。もうね、500Rs出してもいいというくらい美味かった。レストランのスタッフも言っていた。ここはインドで一番美味いと。俺もそう思う。だが肝心の店の名前は失念しており、ここで紹介できない不手際をお詫びする。

 その後は日が暮れて、ぞろぞろと人が出てきて町に活気が出てきた。千と千尋の神隠しに出てきた町のようだ。ようやくインドらしくなってきた町を徘徊し、駅まで歩いて帰る。喉がとても乾くため、水2本は正解だった。

 今夜、次なる町ジョードプルに向かう。列車の到着までウェイティングルームで静かに日記をつける俺に、しきりに話しかけてくるインド人。靴下が汚い。小さなウェイティングルームからふと外を見る。街灯に照らされた人気の少ない駅前。本当にここがインドなのだろうか。

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