これから宿をチェックアウトするのだが、俺がこの宿に入ってからというもの、20ベッド以上あるドミには客が誰もおらず、夜遅くに宿のスタッフが寝に来るくらいでホントくつろげた。ベッド下には収納もあったし。で、今日ようやく白人がひとり入ったくらいだった。入ってきて早々蚊帳を張っていた。あー、俺も蚊帳を手に入れないとな。
「ハロー、この蚊帳、いいね。どこで買ったの?」
「ああ、これは向こうにあるマーケットだよ。すぐそこのニューマーケットは高いから、その先100メートルほどの場所にあるチャイニーズマーケットが安いぜ。この蚊帳はコットンで150Rs。ナイロン製はもうちょっと高い。」
なるほど、行ってみるか。宿で荷物を夕方まで預かってもらう。
列車が出るまでまだだいぶ時間があるためネットカフェをのぞいたが、満員。別のネットカフェを見つけたので入ろうとすると、「待て、今停電中だ」だって。さすがインド。コルカタの今日の気温は40℃。下手にうろつくと体力を消耗するだけ。だいぶ日が落ちてきて、ようやく蚊帳を買いに出かける。ニューマーケットに入る。間もなく声をかけられる。
「ハッパ」
「あのね、そんなのいらないの。俺はね、蚊帳をさがしてるの。」
「よし、そうか、こっちだ。来い!」
とすごい速さで俺を衣類の店に連れていく。
「蚊帳がほしいのか、サイズは? シングルか?これだ、どうだ?」
「ほう。なかなか立派なナイロンの蚊帳だね。いくらかね?」
「850Rsだ」
俺は素で笑った。相場も知っていたしね。
「200」
「830ならどうだ!」
「別の店に行くわ」
「ちょっと待て!よし、580だ!」
「何度も言わせるなよ、200までだ。じゃあな、グッバイ」
「待て待て、ボスに相談するから」
「ハロー!俺がボスだ。いくらがいいんだ?」
「200」
「よし!550でどうだ」
「さよなら」
・・・こんなやりとりがしばらく続く。俺はボスの目をまっすぐ見て、かたくなに200を主張。すると、「250でどうだ!!」うっ。でも俺は曲げない。ここまで戦ったんだ。俺は200を主張し続け、ようやく相手もあきらめて200で落札。俺は勝った。でもさ、200で売ったってことはさ、利益が出るってことだからな。最安はいくらなんだろう? 蚊帳を手に入れたことだし、そろそろ駅に行くか。宿に戻り、バックパックを取り戻し出発。
駅に着いたがまだ時間がある。たっぷり2時間以上待つ。構内のベンチは余裕で満席なので、地べたに座ってひたすら待つ。
ひまなので駅構内の売店を片っ端から見る。売店でベビースターみたいなスナックを買う。かなりの量だったので、これとコーラが今日の夕食。プラットフォームの様子を見に行って悶絶した。今まさに発車した列車(人があふれてるのな)に乗ろうと、インド人数名が絶叫しながら全力で列車に猛ダッシュしている。もう大笑いしちゃった。いちいちおもしろいのな。水飲み場を発見。そこで顔を洗う。ここにもインド人が我先にとペットボトルに水を詰め込んでいた。もうあたりは水浸し。結局笑いになっちまう。
7時15分頃、電光掲示板に俺が乗る列車・2333ビブ―ティExpが表示され た。プラットフォームに行くと、すでに列車が来ており、人の数もすごかった。俺の乗る車両はすぐに見つかり、席もあっさり見つかった。乗車までをけっこう心配してたんだけど杞憂に終わった。エアコン車両だし、わりと広々座れる席で快適かも。隣には外国人女性。フランス語が書かれたコピーを持っていたので、フランス人かと思っていたらタイ人ですって。タイ人とアメリカ人のハーフだって。タイとアメリカのハーフがフランス語の書類を持ってインドにいて日本人の僕と英語で話しているというグローバルぶり。他の乗客はみんなインド人。そういえば、駅の中でも外人は2人しか見かけなかった。インド人が多すぎるだけなんだろうけど。
列車は時刻どおり発車。道中はタイ人女性(名前は忘れた)と話をする。彼女はフリーのカメラマンで、バラナシの次はジャイプル郊外に織物を見に行くらしい。9時過ぎくらいにシートをベッドに変身させる。俺は3段ベッドの真ん中。せまいわね。この車両は3Aだが、さらに上のクラスが2つもある。よく眠れた。A/Cが効きすぎて寒かった。列車の微妙な揺れはけっこう気持ちいいと思った。
この日の支出:
朝8Rs 昼15Rs 夜20Rs コーラ8Rs 水10Rs 蚊帳200Rs チャイ5Rs