バラナシ到着

 コルカタのハウラー駅を出た列車はやはり遅れた。2時間遅れでバラナシ駅に到着。同じボックスにいたインド人の美人なお姉さまからサンドイッチをもらう。普通は絶対にだめ。危険。でも、美人なお姉さんからの好意は死んでも受けるべきなのではないのか。ありがとうございます。

 列車を降りて出口に向かう。とりあえずタイ人女性(タイ子とでも呼ぼう)と一緒に行動する。この時点で俺は完全にタイ子のできそこないの弟状態で、この後リキシャーに乗るまで始終世話をしてもらった。彼女も俺も次の列車を予約したいので、一緒にブッキングオフィスを目指す。

 まずは総合案内所みたいなところに行き、次なる目的地を告げる。するとそこのスタッフは人間データベース。当該列車のNo.と発車時刻を一瞬でさらさらと書いてくれた。これをもってブッキングオフィスに行くのです。インドでこのフローはかなりのサービス。さすが随一の観光地。おかげで無事15日のアーグラ行きチケットを取ることができた。

 荒涼とした駅前に出る。駅構内からずっとリキシャワーラーがつきまとってきていた。「シン(俺のことね)、あいつらを相手にしちゃダメ。テッテテキに無視するのよ」 だが彼女は最も無視しなくてはならない連中と交渉してしまう。

 駅前のオートリキシャの海。よってたかるリキシャワーラーに、タイ子は「彼(俺のことね)をシヴァゲストハウスまでつれてってあげて。いくら?20Rs? グッド。じゃあよろしくね!」と俺のリキシャを手配して去っていった。…俺は知っている。まずいよね、これ。バラナシ駅で待ち構えてるリキシャにだけは乗っちゃいけないってのは有名な話。しかもリキシャはリキシャでも、オートリキシャじゃねえか。オートで20Rsはありえない。それでも一応乗っちゃう俺(笑)。ゲストハウス行きを指示すると、確実に別の場所に連れて行かれると踏んだ俺は、行き先をゲストハウス街近くのゴードウリヤー交差点に変える。

「なんでだ?お前のガールフレンドはシヴァまでだと言ったぞ?」
「気が変わった。ゴードウリヤーまでよろしく」
「ゴードウリヤまでなら60Rsだ」
「何でゲストハウスより近いのに60なんだよ…。じゃあシヴァに行って。そこまでなら20Rsだな?」
「OK!」

発車。30秒後に停車。

「お前の宿の予算はいくらだ?」
「100以下だよ」
「残念。シヴァに100以下の部屋はないんだな」
「いいから行け」

俺はいらだっていたので声を荒げつつせかしたてる。ようやく発車。10秒後停車。

「グッドなホテルに連れてってやるよ。ベリィチープホテル」
「いやいや、シヴァに行ってくれや」
「みやげもの屋はどうだ?いいシルクがあるぜ」
「いいから行けよ!」

発車。2秒後停車。

「てめーいいかげんにしろ!俺は急いでるんだ!!」
「俺だって急いでるんだ!そして怒ってるんだぞ!」

俺は笑った。怒りを通り越して呆れるということを初めて体験した。

「なんでテメーが怒ってるんだよ。もういい、降りる。Fuck you」

 もうこのバカには付き合いきれない。俺はリキシャーを降り、近くにいたサイクルリキシャーに依頼する。25Rsだって。少し高いが仕方ない。どうかまっすぐ行ってくれよ。サイクルリキシャのおじさんは、陽気に鼻歌を歌いながら、また、邪魔な人間や自転車たちをガルルと威嚇しながらまっすぐゴウドウリヤに行ってくれた。

 ゴウドウリヤに着く頃には、俺を勧誘すべく集まってくるインド人2人。やつらは俺を先導し、勝手にガイドを始める。

「ここがプージャーGHだよ~」
「ほっといて」
「なんでLeave me alone!?」

「ラクシュミGHはこっちね~」
「ほっといて」
「なんでLeave me alone!?」

「はい、ここがフレンズGHだよ~」
「ほっといて」
「なんでLeave me alone!?」

「はい、ここがBABAとシヴァだよ~」

 おかげであっさりシヴァゲストハウスは見つかったけどさ。しかしながらバラナシ、駅を降りたときから感じていたが、コルカタとはまったく違う、真のインドを見た。とてつもない汚さ。ゴミゴミしてて、牛と犬と人間にあふれ、壮絶の一言。すさまじいエネルギーだ。シヴァのパワーがこの街には宿っているに違いない。シヴァGHのシングル80Rsに無事チェックインできた。
 それにしても、たかが宿に来るだけなのに、こんなに苦労しなければいけないとは・・。噂通りのバラナシ。いろんな意味で期待値は大きい。

  少し休んでまずは宿の屋上に上がる。ここからガンガーが一望できるというので。ガンガーどころか町が一望できた。ナイス景色。四角い建物群、壮大なガンガー(干上がってたけど)、広い空、俺は外に出て、すぐ近くのガート(川岸)に行ってみた。ボートがたくさんあるね。その後街を散策しつつ、ダシャシュワメード・ ガートやその周辺をうろつく。その辺にいるインド人は皆気さくで、写真を撮ってあげたり話をしたり、もう、誰もほっといてくれない。まったく退屈しない。
 バラナシに来たら一応行かなければならない要所がある。火葬場のあるマニカルニカー・ガートである。死体を焼く様子が見られることで、外国人からは観光地扱いされている。酷い話である。ここは写真撮影厳禁なので、離れたところから眺めていると、やはり声をかけられる。

「ヘイ、カモのジャパニー。こっちにこい、よく見えるいい場所があるぜ」

 あ、そうなんですか。近くの建物の中に案内される。これはまずいんじゃないの? 声をかけてきた男・ペルーはホスピスでボランティアをしており、身寄りのない、命の短い年寄りのため、火葬に使う薪を確保していらっしゃるという奇特な方だ。彼の実況中継を聞きながら火葬を眺める。燃える遺体にそんな間近なわけじゃないのに、熱い。ずいぶん派手に燃えている。足や頭部も確認できた。近くには、これから川に沈めるのでしょう、死んだ赤ちゃんを乗せた舟もある。悪いカルマは悪い人生、よいカルマはよい人生…。

 俺は、現在自分が置かれている状況を知っている。これは薪代をせびられますね。いろんな人から話を聞いている。そして案の定きました!薪代200Rsです。なんか汚いんですよ、かなり衰えた老婆を持ち出してきて、「お前のために、こちらの大婆様が祈ってくれるぞ。ありがたく受けろ」と言われ、頭をなでられて(なんだそれ)幸福を祈られたのだが、知ったことではない。

 「俺さー、インドに来たばっかりで、インドの生活習慣がよくわかんないんだよね。だから今は払えないな。
 でもこれは当然のことではないでしょうか!?」

 と3回も言った。薪代取立人もいつの間にか2人に増えてるし。これはさっさと建物を出ないとまずいな。「ごめん!払えないの!」と強引に脱出。その途端ペルーは「OK、わかった。じゃあさ、俺の店にハッパとかチョコを見に行こうぜ」だって。死ね!

 ガンガーで沐浴する人たち、遊ぶ子供たち、談話する大人たち、歌うインチキサドゥーたちを眺める。みんな仕事はどうしてるのだろう。のびのびと自由に生きてる。

  宿に戻ると隣の部屋に不思議な日本人コンビ(爽やかな俳優さんと買春に命をかけるおっさん)が入っており、彼らとだべる。そして中国の歩き方最新版をいただく。日が暮れてきたので夕日を眺めつつメシに出かけると、プツリと停電。インドで停電は日常茶飯事なのだが、真っ暗になるから外歩いてると本当に困る。 苦手な犬ころを踏みそうになるし、牛の糞を踏むし。後にも牛の糞は何度も踏む羽目になるが、やはりあの感触はいやだ。猿蟹合戦で猿が糞ですべるってのがあるけど、ホント転びそうになるくらいよく滑る。滑ったうえ尻もちなんか付いたら大変だ。
 真っ暗じゃ何もできないし、FANも回らなくてクソ暑いので、宿の屋上に行く。宿のオーナーの娘(10歳)がいる。

ねえ、ニンテンドーDS持ってるー?
「持ってるよ」
今持ってるー?
「日本においてあるよ」
じゃあさー、ケータイ持ってるー?
「日本だよ」
じゃあさー、iPod持ってるー?
「日本だよ」
チッ!!」 

舌打ちすんなクソガキ!

 バラナシは地獄の一丁目と誰かがいっていた。確かに一見地獄のようだ。しかしながら、このみなぎるパワーはなんでしょうか。シヴァが本当にいるのか。インド人の目は鋭い。生気みなぎる目をしている。僕たち旅行者から金をむしり取ろうという決心が目にみなぎっている。

この日の支出:
宿80Rs チケット683Rs リキシャ25Rs 食事80Rs

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