インド旅行記&ネパール旅行記-天国と地獄と不思議の壁

バラナシで日常生活。まんざらでもない

 現在、雨期真っ只中でございます。一日中雨が降っているわけではない。丸一日降っているのは稀なほど。曇りがちで夕立が来る程度。それほどジメジメもない。滞在しているゲストハウスは風通しも良くてカラッとしてるため、洗濯物を干してもすぐに乾く。何より、雨期は涼しくていい。朝方はむしろ寒さすら感じるほど。

 いつもの食堂でターリーを食べる。相変わらず美味過ぎる。飽きないどころかどんどんはまっていく。何か入ってるんじゃないの?きれいな結晶か何かが。ゴキゲンな食堂のボスがバカでかい声でこう言う。

 「もっと食べろ。いっぱい食って、いっぱい働いて、いっぱい寝るんだ!」

 いや、これ以上食べられません。いつもすごい量食べてるよ。

 バラナシにおりますが、だいぶ外国人の姿が目立ってきた。世間では夏休みの時期ですからね。あのね、ドレッドのエクステつけてる君ね、ほんっとにダサいからね。陰で笑われてるからね。特に日本人だよ。香ばしい日本人学生、集団でつるんでるお前らよ、日本の恥だからな。マジで。
 あと、インド初心者は水分をとるのにやたらとジュースを飲む。これはお腹こわすのでほどほどにしといた方がいいでしょう。

 シタールレッスンは相変わらず順調。シタール弾くくらいしかやることがないから、めきめき上達している。師匠も驚くほどで、「こんなにできる生徒は見たことがない」と言わしめるほど。自分の才能が怖いぜ。次は師匠の師匠を紹介するから4カ月時間をとってこい、と。
 それはともかく、ベーシックも終わり、細かいテクニックに入りつつある。ギターでいうところの、チョーキングやハンマリングのような技術もある。そしてここでようやくチューニングを教わる。弦が20本もあるからけっこう大変。基本、耳で合わせるんだけど、キーとなるコードがC#であり、この音を合わせるには、どうしてもチューナーや音叉が必要。ちなみにプロはDでチューニングするらしい。ベンディングする際に力が必要なので、プロじゃない限りDチューニングはきつい。
 生徒は俺と韓国人のソル2人だけであったが、もう一人韓国人が入った。彼も清潔で礼儀正しく、大変印象が良い。ソンヒという。で、ソルもソンヒも同じインドガイドブックをもっているのだが、北インド編と南インド編と2冊に分かれており、それぞれが歩き方インド編より厚い。インドが韓国人に人気なのか、他国のガイドブックも同様にコンテンツ量が多いのかわからないが・・。
 ところで、ソルもソンヒもシタールがヘタである。師匠に言わせると、「韓国人は忍耐力がない」らしい(笑)。基本をしっかりやらずに速く進もうとするらしい。そんな状態で上達などするはずもなく、彼らの練習時間が延びる(師匠が納得しない)ため、俺の練習時間が30分ずれることになったほど。
 レッスンを見学する一般人も多い。特に韓国人が興味深く見入っている。前にも書いたとおり、余裕のある育ちのいい韓国人は概ね礼儀正しく謙虚なので、きちんと挨拶してコミュニケーションがとれる。

 シタールの有名なブランドのリキ・ラームについて師匠に聞いたんだけど、創業者の息子たちが対立してブランド名はそのままに2つにわかれて製造をしているらしい。一澤帆布みたいな?

 バラナシではじまったルーチンワーク。同じ行動を毎日繰り返している。特に何のイベントもなく、ありふれた日々を過ごしている。これが日常ってやつ。旅に出てから、ほぼ毎日が「非日常」だった。非日常の中に自由を見出していた。となると、今はもう自由ではないのか。そうでもない。ふとバラナシを出ていくことだってできる。要は意思なんだよね。何かしよう、何かしなければ、という拘束が自由を滅ぼす。しかしながら、拘束は人生において大切なわけですよ。人はみんなラクな方に流れていっちゃうわけだから。自由とは恐ろしいものだと思う。完全な自由とは無であり、選択の余地はなく、始めも終わりもない。帰国して仕事についたら当然「日常」が始まる。その日常がどんなものになり得るのか、「選択」という自由が、日常の中にはある。