カトマンズ最後の観光の日。ヒドイ一日だった。
朝から絶え間なく雨が降っております。シトシト雨なので観光には問題ない。この程度の雨、傘など要らぬ。ということで、パタンという町に行ってまいります。この町はカトマンズ盆地で一番古い都市であるといわれており、ネワール文化の核ともいえるようです。伝統工芸や芸術などがいまだ盛んで、その文化を守り続ける職人の町です。
正直なところ観光にはもう興味がなく、義務です。行かなきゃいいじゃねえかとあなたは言うでしょう。その通りなんだけどね。でも何もしなくて宿に引きこもってるわけにもいかないし。動いていないと気が滅入っちゃうし。というわけで、しぶしぶバスパークまで歩く。バスがゴロゴロ転がっているものの、行き先がネパール語で書かれているため、どのバスに乗ればいいのかわからない。チケット売り場とかインフォメーションカウンターのようなものも見当たらない。その辺の人に聞いてみるか。おい、そこの青年。
「パタンに行きたいんだけど、どのバスに乗ればいいの?」
「パタンか、俺もそこに行くんだよ。一緒に行ってやるぜ。ついてこい」
道路はかつてない大渋滞。パタンには無事着いたものの、アホがつきまとってきやがる。ほんと厄介な奴に声かけちまったな。とりあえずパタンのダルバール広場に行きたいので、道だけ教えてもらおうか。
「案内してやる こっち 近道 おいで」
いや~なパターンだなー。パタンだけにってか。なんか裏路地に入っちゃってるんですけど。
「さあ、ここが俺の家だ!遠慮なく寄っていきたまえ」
ふざけんなコラ。かなりご機嫌斜めになった俺は、ありがと、じゃあね!とそそくさと逃げる。するとそのアホ、
「おい待て。じゃあ俺は戻るからバス代10Rsくれ!」
この町にはマハボダ寺院というものがある。インドのマハボディ寺院に触発された建物らしい。マハボディ寺院大好きな俺としては行かなければならない。もちろん義務感で。なんか建物に囲まれて窮屈そう。それなりに派手だったけど、規模は雲泥の差ですね。それにしてもこの町は面白い。仏像職人がたくさんいる町なので、あちこちから"カーン、カーン"と真鍮を叩く音が響く。興味があるのでアトリエをのぞいてみる。シャイなネパール職人はこちらをチラリと見つつ、はにかみ笑いを浮かべて仕事を続ける。いい姿だな。その辺の超ローカル食堂、英語もまったく通じないところで軽食をしつつ、帰ることにする。
「残念、このバスは出すことはできない。ストライキだ」
あああああああ。また出ました、ストライキ。度々起こるんだよなコレ。前にも書いたとおり、ネパールはマオイストが支配している。だがまだまだ要求することをたくさんもっている。それを通すためにわがままを言ってまわりを巻き込むのがこのストライキ。民衆もマオイスト恐がってるんだろうね。こうなったらテコでも動かない。もう歩いて帰るしかない。旅人は歩くもの。進むことを忘れたらただの無職だ。すさまじい豪雨の中、俺は歩く。土砂降りの痛みの中を傘もささず走っていく。俺にはカッパがある。カッパを身にまとって歩くものの、すさまじい豪雨はさらに強さを増してもうどうにもならない殺人豪雨となった。カッパなどもうクソの役にも立たず、歩くこともままならない。木の下や軒下などに人だまりができ、みんな歩くことができない。身も心もボロボロだ。
ボロボロの姿のまま、いつものパン屋に向かう。お昼ごはん食べないと。ところがパンを買って宿に帰る途中、サンダルの鼻緒が切れる。使い物にならなくなったサンダルを捨て、裸足で帰る。なんて惨めな俺。服はびちゃびちゃ。ガサガサの長髪。ヒゲ。そして裸足。大事そうに食パンを抱えるこの姿。だれかドネイションをくれ!
というわけで、ヒドイ一日でした。今日は外出すべきじゃなかったな。でもやること全部やったので、これでカトマンズも卒業できるわけだ。もうここにいる理由はない。心に深い傷を負った僕は、夜ごはんはおいしいもの食べよう。チベット料理屋に行こう。モモを2個注文したら10個も出てきた。食べていいのこれ。食べちゃうよ。