インド旅行記&ネパール旅行記-天国と地獄と不思議の壁

ブッダガヤ、さようなら

 さーて今日も朝早くから瞑想に出かけるか。早朝の寺院は人が少なく、僧侶が多いので雰囲気も良い。彼らに混じって菩提樹の下で瞑想をする。ここで瞑想するのもこれで最後か。せっかくだから本殿内の仏像も見てから出るか。さよなら、マハボディ寺院。今度またブッダガヤに来る機会があったらまたここで瞑想しよう。その時はあの男のいないところに泊まろう。のびのびと1週間くらい滞在したい。

 とうわけで、ブッダガヤから出て行く日。チェックアウトが12:00なんだけど、それまでとにかく暇。とりあえずベッドの上に転がっているしかない。そういえば昨日、アリの大群に頭を悩まされたんだよな。俺はいつも朝ごはんはうすっぺらい食パンにジャムを塗って食べてるんだけど、そのジャムがくっついた紙をベッドの上に放置して出かけちゃったんですよ。帰ってきてびっくり。ベッドの一部がアリでまっ黒に染まっていた。その前はコオロギと蚊に悩まされるだけだったんだけど、アリも追加ですわ。ジャム本体はしっかり封をしていたため被害は免れたけど。

 まだ若干アリの残骸がこびりついているベッドの上でぼんやり考え事をしていると、宿のスタッフがやってきた。かれらも暇なんだろう。相変わらず観光客が少ない時期でね。だからって部屋で休んでるところをいきなり入ってくるとかねえだろ。お互い暇なのでどうでもいい話をして時間を潰す。安い宿でありがたかった。1泊40Rsだよ!

 暇すぎてネットカフェに行ってメールをチェック。ああ、日本の実家がついになくなるのか。俺と同じ歳の家が。あっ、失礼。どうでもいいですよねこんなこと。しかも意味わからないですよね皆さんには。

 メシを食いに食堂に行くと、どこかで見た外国人女性が。どこかで見たどころじゃなく、デリーで仲良くなったエレナだった・・。向こうは気付いてなくて、別に俺も今さら声をかける気にもならなかった。こんな真昼間からこんな場所で平然とジョイントをキメるエレナに呆れたというのがホンネ。いまさら話すこともないしな。

 12時になったのでチェックアウト。さて、この町を出るか。いやいや、まだやらないといけないことがあるんだ。昨日、あの男と酒を飲んだ。お世話になったので少しはおごってあげた。だがその時あいつは持ち合せがないということで、その場は全額俺が支払ったわけです。つまりあの男に金を貸しているわけだ。それを取り戻さないといけない。しかし、いつもいるはずのやつがいない。絶対逃げてるな、と疑心暗鬼が強まり、周囲のスタッフたちに詰め寄る。

 「あいつどこいったの?いつもこの辺にいるじゃん」
 「そうだな、いつもいるよな。どこ行ったんだろ」

 「ねえ、あの男知らない?見なかった?」
 「しらないなー、でもバイクはあるな。すぐ戻ってくるんじゃないか?」

 たしかにバイクがあるから遠くには行ってないだろう。俺は待つことにした。が、しばらく待っても帰ってくる気配がない。仕方ないのでスタッフにお願いする。

 「あのアホの電話番号知ってる?呼び出してくれないか?」
 「OK。でもどうしたんだ?そんなに大事な用事か?」
 「俺はな、あの男に大金を貸しているんだ」
 「大金だと!? いくら貸してるんだ?」
 「40Rs(≒100円)」
 「えっ?40・・?」
 「うん。でも俺にとって40Rsは大問題なんだ」
 「40Rsが大問題だって!?」

 インド人にとって40Rsは決してカスのようなものじゃないけど、外国人がこの発言したことに驚いたわけです。というわけで、あの男を呼び出すことに成功し、金を取り戻す。説教してやったよ。こんなこと繰り返してるんだったらてめえのことを行く先々で言いふらして誰からも信頼されないようにしてやるからな、って。でもお世話になったことも事実。深い感謝の言葉も添え、最後はしっかりと握手して別れた。また来るぜ!って。

 いままで出会った旅行者に、「お金にシビアなんですね」とか「しっかりしてますね」とか「どうしてそんなに節約するんですか?」とかよく言われた。別にケチなわけじゃない。使うところにはしっかり使っている。ただ、納得のいかない使い方だけは絶対にしたくないというだけ。外国人観光客がやたらとカネをばらまくから、40Rsが大問題なのか!?って驚かれるわけでしょう。

 ようやく出発。ここからガヤー駅に行かなければならないが、バスが出ていない。。どうやらオフシーズンの影響で、いまは本数が極めて少ない様子。心から嫌なんだけど乗り合いリキシャーしかない。もうね、いつものことだけどおかしい。ちょっと大きめのリキシャーなんだけど、ふつう7人乗りなんですよ。乗客14人ですわ。どうやったらこんなに詰め込めるんだろう。ていうかよく走れるよな。カーブがあまりないからよかったけど、危なすぎるだろ。
 リキシャーは駅まで行かず、バススタンドで停車。乗り合いだから仕方ない。ここから駅まではサイクルリキシャーで。リキシャーの乗り換えってやだな。もちろんこのサイクルリキシャーも乗り合い。今度は2人だけね。定員ピッタリ。乗り合わせた紳士的なインド人はガイドをやっているとのことで、英語も聞きやすい。バイクの話で盛り上がりつつ、駅に到着。

 17時に駅に到着したものの、列車が来るのが定刻どおりなら21時の予定。どうしたものか…。なぜこんなに早く来てしまったのだろう。2ndクラスのウェイティングルームで放心していると、一人の日本人が声をかけてきた。ありがたい!本当にありがたい。話相手がいるって助かる。時間をつぶせる。彼はバックパッカーではなく、そこそこ贅沢旅行しているようで、短期の旅。
 いまさらですが、一人旅同士は一瞬で打ち解けられる。不思議なもので、全く抵抗もなく、自然にこのようになる。これに慣れてしまうと、日本に帰った時に戸惑う。無関心社会というものを実感する。

 ところでガヤー駅は電光掲示板が壊れており、まあそもそも停電が頻繁に起こるんだけど、列車状況がまったくわからないため、駅員に遅延状況やプラットフォーム変更なしか聞きにいかないといけない。めんどくさい。奇跡的に僕が乗る列車は定刻どおり来ました。ホント奇跡。これからバラナシに向かいます。バラナシへは午前2:30着予定。おいおい、そんな時間に着いてどうしろってんだよ。