バラナシに戻る

 ブッダガヤーを出た列車はバラナシに向かっている。早朝2時40分に着くという中途半端な道中のため、寝たり起きたりを繰り返す。列車は見事定刻通りに到着。・・・こんな時間に着くんだから、どうせなら遅れて欲しかった。

 久しぶりのバラナシ。もうさすがである。こんな早朝3時からリキシャワーラーがまとわりついてくる。バラナシのリキシャワーラーは極めてしつこく、そして悪質なので絶対に相手にしてはいけない。駅の中はもちろん、駅近くでたむろっている連中はNG。
 とりあえず、こんな時間に身動きなど取れるわけがない。宿だって空いてないし外に出て野犬に襲われたら大変だ。駅のリタイアリングルームで休むことにする。というかはじめからそのつもり。ドミトリーで50Rs。空いてるベッドは2つだけだった。たかが5,6時間の休憩で50Rsはいたいけど仕方ない。

 ドミのベッドに横たわっているのは全員インド人だった。大きな送風機が回ってて涼しい。水シャワーを浴びてとりあえず寝ることにする。バックパックはカギ付きのロッカーに収納し、デイパックを抱きしめて眠る。

 8時頃起床。ほとんど人がいなくなっていた。とりあえず、いつもの安宿街を目指そう。駅を出た途端押し寄せてくるリキシャワーラーども。相変わらず壮絶。もちろんことごとく無視。道路を少し歩き、駅から離れたところにいるサイクルリキシャに声をかける。

 「おはよう♪ ゴードウリヤまで行ってちょうだい。おいくらかしら?」
 「200Rs」

 交渉するのも馬鹿らしく時間のムダなので次だ次。次のリキシャへ。

 「おはよう♪ ゴードウリヤまでおいくら?」
 「20Rs」

 やるじゃん。それでいいのよ。最初から正直なリキシャはまっすぐ目的地に行ってくれる。寄り道などしないし営業もしてこない。正直者こそ報われなければならない。だが、客を適正価格で目的地まで送るのは当然のことなので、別にチップをやる必要もない。

 前回泊まった宿にチェックイン。ホント宿には困らない場所だよな。とりあえず朝食ということで、その辺でバナナとマンゴーを買ってきてパンにはさんで食べる。バラナシは物価が安いので助かりますわ。そして昼過ぎまで昼寝。それにしても、バラナシはなぜこんなに落ち着くんだろう。

 ところでどうしてバラナシにやってきたのかと言うと、ここでいったんネパールに行こうと思います。ネパールに行くのにバラナシは便利な場所なので、ここで準備を整えようと思って。しかも明後日、北インドでお世話になったインド人、ムルジさんと会うことになっている。長い距離をわざわざ来てくれるんだ。また、予定ではネパールの後インドに戻り、すぐにパキスタン→中国というルートを考えていた。シルクロードを旅するつもりだったんだけど、ちょうど四川大地震があった影響で少し考えていた。家族や恋人も非常に心配している。メールをチェックしていると、やはり恋人がどうしても四川はいかないでと懇願しているので、とりあえず延期しようということで決心した。インドに戻ってしばらく満喫しようと。やりたいことがあってね。

 バラナシといえばガンジス河。カメラ片手にガートをうろつき、静かな場所でずっとひたすら延々とガンジス河を眺めていた。いろんなインド人が声をかけてくるんだけど軽くあしらう。その中で、見覚えのある少女が声をかけてきた。俺の記憶がよみがえる・・・

 ~以下回想~

 「ねえ、ポストカード買わない?」
 「いらないなー、ごめんね」
 「ほら、こんなカードもあるよ。見るだけ見て」
 「まあ見るだけね。ほうほう、いろいろあるね」
 「どれが気に入った?」
 「これとかこれがいいね」
 「20Rsね!」
 「いや、買わないよ、ごめんね」
 「そう・・」
 「もし今度会ったら買ってあげるよ」
 「本当に?約束ね!」

 ~以上、こんなことがありましたわ。俺は約束を守る男。ポストカード、買おうじゃないか。

 「君との約束、憶えてるよ。カード・・もらおうかな」
 「は?約束?ていうかあなた誰だっけ?」

 おいてめえ。まあ仕方ないけどさー。この子は1日何十人と言う外国人に声かけてるんだしな。前回彼女をデジカメに収めていたのでそれを見せると、、

 「あ、私だ・・」

 まあいい。いいよ。とにかく約束だからカードを2枚買った。死体焼き場のマニカルニカーガートのポストカード。誰に送ろうかな。

 「もっと買ってよ」

 図に乗るんじゃねえクソガキ!まあ憎めないかわいい子なんだけどね。

 この日、日本では秋葉原無差別殺傷事件が発生。なにやってんだ情けない。

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