列車の中でもの思う葦

※今回掲載する写真がありませんでした。

 長距離移動の列車の中。1時間ほどの遅れでコーチンに向かっている。南インドに入り、だいぶ景色も変わってきた。植物、特にヤシの木がたくさん増え、所々できれいな沼地もあり、水鳥が羽を休めたり、野生動物がのんびりとしていたり。乾いた荒れ地はもうほとんど見えない。
 昼間はクソ暑い。この暑さが文章だと伝わらないのが悔しい。そして暇。この暇さがどれほどのものなのかを伝えられないのがまたもどかしい。とにかく苦痛そのもの。しかし列車に乗っている以外にどうすることもできない。この列車はインド最南端のカンニャークマリが終点。列車もよく走るわ。インドの列車ってすごい。超長距離路線がインド中に張り巡らされているわけだ。まあ鉄道敷いたのはイギリスなんだけどさ。

 同じボックスシートには2人、インド人青年がいる。

「ねえインド人のお兄さん、このビッグホリデイはいつまで続くの?」
「本格的に雨季が始まれば人の動きが止まる。今がピークだよ」
「じゃあもう少しってわけだ」
「そうだな。6月の第一週ってところだろうな」
「これだけ大規模な人の動きだといろいろ大変でさー」
「そりゃ俺たちだってそうだ。全然チケットがとれないんだよ」

 しかしこう暑いとコーラが美味い。列車の天井には扇風機がたくさんついてて常に回しているんだけど、それ以上に暑さが厳しい。インド人は相変わらず熱いチャイを飲んでいるが、飲む気はせんね。実は今までインドにいてチャイはほとんど飲んでいない。どう考えてもジュースの方がいいだろう。と思っていた。が、インドで冷たいものばかり飲んでいると体を壊す。チャイを飲むには理由があるわけだ。

 突如周囲が騒然となる。オカマ集団の襲来!5人の若いオカマたちが、踊りながら車両を巡行。ご丁寧にひとつひとつのボックスに立ちよって愛想を振りまいて行ってくれる。イベントかと思うほどサービス精神に富んでいた。すっげーハイテンションなの。サンバカーニバルといえばわかりやすいか。オカマなのでサリーに身を包み、キレイ?にお化粧とかしてるんだけど何しろでかくてごつい!恐い!! 同じボックス席の青年たちもオカマ達に絡まれて苦笑い。嵐のように、隣の車両の方に去って行った。俺はただただ戦慄していた。
 僕の友人(男)がネパールで黒人(男)にレイプされそうになり、大声で泣き叫び大暴れして近所の店の主人に助けられたって話を思い出した。味方のいない外国で図体のでかい外国人に狙われたら終わりだ。ましてや複数人にやられたら骨と皮しか残らないだろう。

 コーチン到着予定は翌早朝5:00。着いたらどうしよう。その先の列車チケットがW/Lなんだよな。ホリデイのためチケット取るのが極めて困難でして。とりあえず宿を確保して、W/L番号を確認。W/Lのままだったらバスでの移動を検討しないといけない。だけどね、バスでの移動はもう心底懲りているし、この暑さと湿気で発狂するのはわかりきっている。そろそろ旅行保険が切れるから、別のカード使って利用付帯保険へ切り替えないといけない。いっそのこと飛行機にでも乗っちまうか?中国同様、インド旅行の要は列車を確保できるかどうかに依る。長距離の移動手段が列車くらいしかないから当然なんだけど。
 インドの列車は古い鉄の塊のディーゼル列車。ドアは電動であるはずがなく、重い扉は走行中でも自由に開けることができる。俺はドアを開けて入口のステップに腰をおろし、流れる景色をずっと眺めていたものだ。たまに駅員が来て閉められちゃうんだけど。

 長い列車の旅はクソ暑くて暇で苦しいわけですが、かつてのカジュラホ→アーグラのバスに比べれば余裕。それに何より、車窓から眺める壮大極まりないこの素晴らしい景色。長い旅の中、このような経験もいいでしょう。東南アジアなどを旅していた時はまるでツアーだったからな。インドの旅に終わりはない。終わりだと思った時が終わりなのだ。

 この道がどこを通るのか知らない 知っているのは辿りつくところがあることだけ
 そこがどこにあるのか そこで何があるのか わからないままひとりで別れを告げて旅立つ
 信じたいために疑い続ける 自由への長い旅をひとり 自由への長い旅を今日も
 (岡林信康 『自由への長い旅』)

 この日の出費
 朝メシ15Rs 昼メシ30Rs 夜メシ23Rs ジュース40Rs

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