奇跡のエローラ石窟群

 午前4時過ぎにアウランガーバードに到着。町に着いたらまずは恒例の宿探しであるが、目的の宿は決めていた。ユースホステルなんだけどね、そこがOPENするのが7:00なのよね。しばらく駅構内に居座る他なかった。他にないわけじゃないんだけどさ、この町には別に興味はねえんだ。ここに来た目的は、世界遺産・エローラ石窟寺院観光のため。観光には興味がない俺でも、少しくらい見たいところはある。4時だからまだ暗いし、野犬がこわくて外を出歩く自信がない。

 時がきたのでユースホステルに向かう。駅から歩いて15分くらいかかる。まだ早朝だし歩ける。いやいや暑いけどね。駅から真っすぐ伸びている道を行けば着くけど、若干わかりづらいところにあるかも。ちょうど7時に到着し、チェックイン。オフシーズンのためか、広いユースホステルではあるが誰一人宿泊客はいない。ユースホステルってのは、かつては冴えない学生が夏休みに全国各地から集い、キャンプファイヤーを囲って自己紹介したり、ひと夏の恋に浮かれたりと、青春を過ごすための施設だったのであるが、今ここには誰一人いないのである。部屋のベッドには蚊帳が常設されている。しばらく宿に泊まっていなかったため、まずはシャワーを浴びて洗濯をする。

 8時。観光に出かけようとエントランスの方に行くと、日本人青年が一人チェックインしようとしていた。彼Y君はインドに来てただひとり行動を共にした日本人だった。僕はインド以降はずっとひとり行動だった。ひとりが好きだからというだけでなく、行動を共にしたい日本人がいなかったということもある。Y君の実直さはとても印象がよく、久々に他人と一緒に行動してもいいかなあと。あと、彼はまだムンバイINでインドに来たばかりだということもあり、放ってはおけないという気持ちもあった。上から目線みたいだけど、俺も旅のはじめはいろんな人にたくさんお世話になった。だからその恩返し。思いやりの連鎖。

 彼もすぐエローラに行くというのでさっそく出発。エローラに行くにはバスを使うのがふつう。バススタンドはユースホステルから10分くらいのところかな。エローラはインド屈指の観光地であるため、バスはたくさん出ているはず。
 ただしバスに乗るにはちょっとしたコツがいる。どうせ人だかりになるのはいいとして、とにかくクソ暑いため、太陽の位置を考えて座席に座らないといけない。あらかじめ地図を頭の中に叩き込んでおき、向かう方角とその時刻の太陽の位置を推測し、直射日光に当たらない側に座らないと死ぬ。基本バスは満席になるので、途中座席移動ができない。今回の場合は西側の座席に座る。
 エローラ石窟寺院までは所要50分。暑いことは暑いが、デカン高原を吹き抜ける風がさわやかで、いやらしい暑さではない。

 エローラ石窟寺院。エローラ石窟群が正式名称かな。文字通り単体の寺院跡ではなく、第1窟~第34窟まである。もっとも古いものは5世紀につくられた。特徴はなんといっても石窟という名の通り、全て岩というか垂直な崖を掘ってくり抜いてつくられたものであるということ。さらに宗教が混然とし、古いものから順に、仏教群、ヒンドゥー教群、そしてジャイナ教群の寺院がほられている。これは非常にまれなことだと思う。他教が隣り合ってる、同じ敷地にあるなんてことは普通考えられない。とくに宗教になじみの薄い日本人にとっては理解しがたいというより意味がわからない。これまでいろんな世界遺産・遺跡を見てきたけど、このエローラ石窟群、とくに奇跡の第16窟は他とは比べ物にならないものだった。体中の血が沸騰したことを、今でもしっかり憶えている。世界でもう一度行きたい唯一の遺跡です。

 入場料は驚愕の250Rs。相変わらずむしりとってくれるよ。250Rs分は楽しまないとね。Y君と第1窟から丁寧に見て回る。ちなみにエントランスから真っすぐ前にメインである第16窟があるんだけど、そこは最後にとっておく。俺たちは貧乏性なんだ。じらしてじらしまくって絶頂へ、が基本じゃないですか。インド人のビッグホリデイのわりに、意外と観光客は少なかった。さすがに外国人は比較的いました。広大な敷地のため、普通のインド観光であればのたれ死ぬところではあるが、風がね、ほんとにさわやかで。うまくできてるなと。石窟の中は涼しいしね。観光がしやすいことこの上ない。観光ルートもしっかりできており、道も途中までは整備されているものの、やっぱりインド。けっこう自由に崖登ったりできるんだよね。崖の上に立って果てしなきデカン高原に圧倒される。見渡す限りの地平線。荒野。もうまさにゲームの世界。崖を下り、ヒンドゥー編最後の第29窟。これまた神秘的な世界。

 宗教というのは人が生きていく上でなくてはならないものなのか。生きるためのパワーの根源が宗教なのではないか。それを実感させたのが第16窟・カイラーサナータ寺院。人がなせた業とは思えない、エローラ石窟群の主役。壮麗な建築物にしか見えないんだけど、実際にはひとつの岩から掘られたもの。20万トンの岩を掘り出し、100年の歳月を要したといわれる。いやいや、100年でこれは無理でしょうというレベル。人類が成し得た奇跡。人類の限界を超えた奇跡。もはや絶句するのみ。人は信じられない光景を眼前にするとこうなる。インド人がすごいとか、宗教に帰依している人がすごいとかもあるけど、人にはこれほどのことができる力があるってことが素晴らしい。

 Y君、観光を終えたのでメシでも食おうか。石窟群の近辺には食べるところがけっこうある。高級なところもあるけど、普通のメシ屋が多い。割高だけどね。でもオフシーズンだったから、ターリーが50→30Rs。量は相変わらずすさまじいけど。

 帰りのバスが面倒だった。なかなか来ないの。つーか一向に来ないの。来ても無視されて通り過ぎるの。道路に出て行って大きく手を振って止まれーーと叫んでも無視するの。俺たち同様困っている白人青年とともに、リキシャーシェアして帰ろうかということになったが、乗れるリキシャーがいねえ!いるのはみんなチャーターされたもので、遊軍がいないんだよ。オフシーズンは人が少ないことはいいけどこういうときは困るな。ま、結局バスつかまえることができて帰れたけど。

 Y君はインドに来たばかりで、1ヶ月程度旅をするという。だが所持金は12000Rs。帰国の飛行機チケットはもっているにせよ、正直これはきついよ。そして今後のスケジュールを聞くと、オープンジョーでデリーOUT北上の旅。すべてA/C車両の旅を考えているという。絶対無理。心配なので、彼のために時刻表を開いて最安のルートを調べてスケジュールを組み直した。消去法で行き先を削り、もちろん車両クラスはすべてスリーパーにさせ、基本夜行列車宿なし行程。時刻表も持ってなかったんだよね。まだインドの恐ろしさを知らない。大丈夫でしょうか。メシを食いつついろいろと相談に乗る。20時前には宿に帰る。ユースホステルだから、門限があるのよ。

この日の出費:
宿160Rs 朝食20Rs バス15 エローラ250Rs 昼食30Rs 水10Rs 夕食25Rs

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