ピンクシティ ジャイプール


 アーグラーを深夜0:00に出た夜行バスは、予定ではジャイプルに6:30に到着する。ところがだ、5:30に着きやがった。早すぎるよもう。朝早すぎは困るよ。バスを降り、とりあえずチャイを飲みつつそこら辺の人にテロの状況を聞く。発生場所や現在の状況などを確認。どうやら問題ないみたいだが、インド人の言うことは眉唾物だからまだ信用はしていない。少なくとも見渡した限りは何も問題ないようにみえるが…。やはり俺の身を案じている人がいるわけですからね、しっかりと確認しないといけない。ジャイプル駅構内にある、政府観光局に行くことにした。ガイドブックの地図を開き、駅に向かって歩き出す。よってたかるリキシャワーラーが親切に忠告してくださる。毎度毎度ありがとうございます。

「ここから2kmもある」
「歩いて行くなんてありえない」
「無理だ、無謀だ」
「不可能だ」
「バカだ」
「とりあえずホテルへ連れて行こうか?」
「ジャパニー」

 まだ暑くないし平気だもんね。それに俺は歩くのが好きなんだ。ほら、あっさり駅に到着したよ。早朝ではあるが政府観光局は開いていた。24時間営業らしい。ジャイプルは見どころがたくさんあるため、ここでツアーを組んでもいいかなと甘ったれた考えをもっていた。オフィスに入るとひとりの日本人がいた。エアコンがきいたオフィスでサービス精神のあるスタッフ。やっぱり観光地は違うなあ。ここでテロの状況を詳しく聞き、その事件が掲載された新聞を見せてもらう。発生場所もしっかりチェック。複数のヒンドゥー寺院に対する同時爆破テロである。大きく被害者の痛々しい写真が載っていた。どんなに踏んづけてもくたばりそうもないインド人が殺されている光景は衝撃だった。
 そこにいた日本人は、ちょうどテロに遭遇したようで、その時の状況を話してくれた。警察が働いているところをはじめて見たらしい(笑)。俺は一度もないよ。ちなみに彼は俺とは逆のムンバイINの北上の旅のため、情報交換をする。で、観光局が催すジャイプル観光ツアーに申し込むも、最少催行人数が5名だって。今のところ申込者は俺一人だけ。さすがにオフシーズンの上、テロ直後じゃ仕方ないか。ツアー料金表をみたところ、200Rs程度なのであるが、しっかり確認したところ、各観光施設のエントランスフィーが含まれていないため、トータル額を計算してもらうと半日ツアーで600Rsくらい。無理ですね。そんなに出せません。やはり甘えはいけませんね。クソ暑い中大変だけど自力で観光することにした。

 観光の前に、次なる目的地への列車チケットを買わないといけない。列車予約窓口が開くのは8:00なので、それまで観光局で時間をつぶし、知り合ったその日本人と一緒に予約オフィスに出かける。バックパックは観光局で預かってもらえる。俺はチップを払わなかったけど、いくらか払うのがマナーだと思う。この頃の俺のがめつさというか節約根性はいったい何だったのか。

 これからのルートは、ジャイプル→ジャイサルメール→ジョードプル→アーマーダバード という予定で、すべて確保。時期的にA/C車両が取りにくく、SLにランクを落として取れた。これで当面の日程もFIX。これから回る町々は砂漠の国である。SLクラスなんか砂だらけになりそうでいやなんだけど仕方ない。

 ようやく観光に出かける。ジャイプルはピンクシティとよばれ、旧市街の建物はピンク色の外壁に統一されている。約150年前からの伝統である。名前が実に怪しいが、決して娼街ではない。そんなピンクシティへ向かうため、サイクルリキシャを使う。すごくいやだけど!でも交渉したリキシャは良心的で、そんなに安くていいのかよ、とすら思えたほど。しかも服装からしてムスリムのようで、あんなテロの後だし肩身も狭いんだろうなと同情する。

 テーマパークのようなピンクの町。建物もすごく素敵で町はテロがあったとは思えないほど普通だった。現場を少し見たけど、さすがにそこはね。。だが人々は何事もなかったかのように町を歩き、物を売り、生活している。実は、ちょうど今日から観光や商売が再開だったようである。テロよりも日銭が大事。
旧市街はアーケードがあり、日影が多い。土地柄日光と砂から守るためかと思われる。物にあふれた豊かな町だ。そして大きな特徴として、ゴミが少ない!インドの普通の町だったらゴミだらけなんだけど、見事にない!キレイ!どうして?インド人が掃除なんかするわけないだろうから、風が吹き飛ばしてるのかもしれない。

 観光の中心地であるシティ・パレスまで行ってもらう。この炎天下の中、料金をふっかけもせず、ボロボロのサイクルリキシャを一生懸命こいでくれる姿に心を打たれた俺は、はじめてチップというものをあげた。彼は首をかしげて黙って去って行った。インド人が首をかしげるのはYesのサイン。

 シティ・パレスの近くにはジャンタル・マンタル(2010年8月世界遺産認定)という天文施設がある。大規模な天文観測所で、敷地内のあちらこちらに変わった形のオブジェが立ち並ぶ。使用用途はよくわからないが、美術館の一角のような感じ。入場料は100Rs。たっけえなあ。だがどうしても見たかった施設なので泣く泣く支払い、期待値MAX入場。そしてすぐさま絶望!おいいいいいいい!なんだよこの積み木群は。。しょぼすぎるだろ。こんなもんで100Rsかよ。。唯一よかった思い出は売店で買ったLimca(インドに存在する最強究極のソフトドリンク。レモン+ライムの炭酸飲料。コカコーラ社製)でした。その後、風の宮殿など主要な見どころをそそくさと観光。暑いしさー、別に面白くないしさー。大きなピンクシティの中にある一建物ってかんじだからさ。

 ジャイプル最大の観光地といえば、アンベール城である。ジャイプル郊外の丘の上に建つ、巨大な城塞である。風の宮殿近くから、アンベール城行きの出ているらしい。近くの屋台で軽食を買ってその屋台のおっさんに聞く。

「アンベール城行きのバスってここらへんに来る?」
「お、ちょうどあのバスだ、おおーーーーい!止まれ!止まれぇーーーーーい!!」

 と親切にも止めてくれました。公共の乗り物を私物のように扱えるインド人。いつも迷惑ばかりだけど今回は良し。俺は自分さえよければいい人間なんだ。

 バスから眺めるジャイプルの町。この町は宝石の加工が盛んで、原石がたくさん集まる場所。宝石屋がたくさんある。かなり安い値段で原石が手に入るけど、素人目では騙される可能性が高いらしいので手を出さなかった。所要20分程度でアンベール城の入口に着く。そこから城まで歩くのがとても大変。クソ暑いし。

 随一の観光地だけあってきれいに整備はされている。エントランスフィーは入り口では取られない。山を登った城のエントランスで取られる。うまいやり方ですねー。巨大な城塞、観光客もたくさん。でも外国人がいない。。チケットはカメラ料金込で100Rs。まあ妥当かな。実はアンベール城は全く興味なかったのだが、かなりよかったです。まずその大きさ。そして内装の豪華さ。迷路のように無数の通路が通っており、自由に通行可能。丘の上にあるので風通しも良くて涼しい。

 とりあえず、これで観光終了。交通費食費を含め、合計250Rs程度で済んだ。どこに行っても観光というものにそれほど興味がないので、いつもながらやっつけ仕事の観光でした。それでもジャイプルは個人的にかなり気に入りました。時間があればもっと探索したかった。あと、リキシャーがわりと良心的。揉めなかった。

 市街に戻った頃、まだ時間は昼くらい。困った…。今夜ジャイプルを出るのだが、列車の時間が夜12時なんだよ。あと12時間もあるじゃん。このクソ暑い中、どうすればいい?もう出かけるのはいやだよ。カジュラホからここまでの地獄の道中で体力も低下しているし、下手に動くと死ぬ。仕方ない、宿をとろう。駅近くのRTDC(Rajasthan Tourism Development Corporation=ラージャスターン観光協会)が運営する宿に行く。ドミトリーに入ると、そこには駅の観光局で出会った日本人が寝てましたわ。こんなところでまた会うとはね。。そういえば彼もどこかで休みたいって言ってたからな。シャワーを浴びて少し仮眠をとる。メシ食いに行ったりぶらぶらして時間をつぶす。暑い…。

 日本人の彼は10時頃旅立ちました。俺は先日の過酷な移動のストレスで体調を崩していた。下痢体の身を案じつつ、11時にチェックアウト。列車は30分遅れで到着。自分の席(寝台)に上ると、あっという間に寝た。ちなみに深夜だろうがなんだろうが、インドの鉄道のプラットフォームは常に人がいっぱい。ゴキブリも肩身が狭そうにそそくさと逃げていく。

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