カジュラホのエロ遺跡へ

 デリーからジャンシーに向かう夜行列車の中。時計のアラームで目覚める。4時15分。予定では4時55分に着く。が、いつものように遅れている。前にも言った通り、インドの列車は車掌が起こしに来てくれるような気の利いたサービスがないため、自分で目覚ましをセットしてないといけない。だが、インド人どもが目覚まし時計を持っているのを見たことがない。かれらはどうやって目覚めているのだろうか。。

 無事ジャンシー駅に到着。ここからカジュラホ村に向かいます。まず、バスを探さないといけない。プリペイドリキシャに金を払い、駅から5km先のバススタンドに行くよう指示する。その途中、カジュラホ行きのバスを発見。急遽乗り換える。リキシャワーラーのやつ、知ってたな。金返せとは言えないしすぐバスが出そうだったので、とりあえずバスに乗り込む。

 カジュラホまでの所要時間は4,5時間ほど。車内は珍しく空いており、これは快適だと思っていのだが… 30分くらい走ったころ、バスのチェンジ。なんでバスがチェンジするのかまったく意味がわからないが、インド人の事情があるのだろう。どうせロクでもない事情が。最悪なことに、チェンジ先のバスは人がいっぱい!!乗っていたバスは、バスへのシャトルバスってことか(笑)。
 定員をはるかにオーバーしており、屋根にもいっぱい乗ってる地獄のバス!! これ以上、一人だって乗れねえだろ。嫌な予感が的中し、俺は屋根の上にのぼらされる。しかも目の前には朝日が上ってきている! クソ眩しくてすでにクソ暑い。このままだと直射日光と鉄板の床による尻へのダメージと恐ろしい狭さとお下劣な話をしてくるインド人どもに殺される!こんな状態で4時間も耐えられるわけがない。暑くて眩しくて狭くてケツが痛くてインド人どもがエロ話ばっかりしてきてもういやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ死ぬううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう

 1時間程度走ったところで中に入るのを許される。車内も大変なことになっているんだけど屋根の上よりマシ。インドには空いている車両など存在しないから仕方ない。常時通勤ラッシュ状態。みんなこんな朝からどこに行くんだろう。しかし、、カジュラホは遠かった。いくつも町を経由した。着いたのは11時くらいか。あー、すでに暑さで死にそう。

 バスを降りると、うわさどおりホテルの客引きが群がる。みんな必死だ。酷暑期ということもあるだろう、今は観光客はほとんど訪れないようだ。俺は泊まるところを決めていたので、ひとりひとりにその旨を伝え、退散させる。親切にお断りをする。が、ひとりだけ俺の泊まりたいところの客引きがいたので確保する。34歳無職のジョンである。

 ところで、このカジュラホの後はジャイプルに行くのだが、ジャイプルに行くために一度アーグラーを経由しなければならない。ジョンからカジュラホ発アーグラー行き直行バスが出ているという嬉しい情報をもらい、さっそくバススタンドでチケットを予約する。明日の9時発、アーグラーのイドガーバススタンド行き。以前アーグラーで泊まったゲストハウスのすぐ近くである。

 無事目的の宿にチェックインする。シングルルーム150Rs。ちょい高い。部屋はきれいで清潔でいい感じだった。ウェルカムチャイをいただきつつ、情報ノートに目を通す。ガイドブックに載っている宿だけに、日本人の書き込みがたくさん。みなさんこの宿にもこの町にも満足している様子。

 部屋のドアのカギがぶっ壊れてるため修理してもらっている間、ジョンとメシを食いに行く。カジュラホのレストランは軒並み高いので、バススタンド近くの極めて小汚い食堂で安く上げる。ここでジョンが本題に入る。観光のご案内です。まあ聞こうじゃないか。宿とメシを世話してくれたし。まずレンタサイクルで町全体と東、南寺院を見て、その後リキシャーで1時間ほどにあるとてもきれいな川で遊んで、メインのテンプルは明朝行くのがいいと。彼はリキシャードライバーなのね。確かに暑さも考慮したらいいプランだよな。でも残念。俺は東・南寺院なんか興味ないんだよ。丁重にお断りしてジョンと別れる。ジョンは無職というか、ローシーズンだから一時的に暇ってだけか。

 宿に戻ると、エントランスになぜかクジャクが。。ペットなのか野良なのか。カギは直った。さて、着替えてシャキッとして、もうこの町メインのエロ遺跡に行こう。カジュラホの寺院群は世界遺産に登録されており、とくに有名なのは西群のヒンドゥー寺院跡。官能的なレリーフに覆い尽くされた姿はぜひ一度見てみたかった。
 その西群寺院は宿から歩いてすぐ。暑さ対策に、頭にルンギーを巻き、メチャメチャ冷えた、というか半分凍った水を買い、入場チケット250Rs(!!!)を泣く泣く買って西群の寺院跡に入る。…クソ暑い。人はまばら。外国人の姿は皆無。もうとにかく暑いんですけど。気温は45℃を超えているため、冷水がわずか30分でぬるま湯に変わる。

 うわさ通りエロチックなレリーフたち。もっと全てがエロかと思ったけど、全体的にはソフトエロ。15禁ってところかな。極めてエロい18禁な個所はごく一部のみ。しかし、どれをとっても緻密ですさまじい芸術性の高さ。芸術的過ぎて性的興奮などまったくしない。壮大で敷地も広く、見ごたえも見どころもある。が、とにかく暑いため、何度も日陰で休憩しながら見て回る。つまらないといえばつまらないが、やはり250Rsも支払ったため、2周もした。観光客がほとんどいないため警備員も暇そうだったので、しばらく話相手になってもらってました。

 この村の見どころはいろいろあるものの、なにしろこのゆるい空気。そしてクソ暑いため、俺はインドに来て初めてビールを買うことにした。キングフィッシャー大瓶、価格はなんと80Rs!つまみは路上で売ってたメロン。さっそく宿に帰って飲んだ。あまりのうまさに一瞬で飲み干す。眺めの良い屋上で飲み干す。それでも思ったより感動しなかった。別にビールである必要はなかった。マウンテンデューでよかった。ほろ酔いでグダグダとしていると停電。間もなく尋常ではない強烈な砂嵐が襲来。大丈夫かこれ!?ってくらい。パニックになる俺。酔いもさめるわ。町が壊滅するかと思った。

 恐ろしい砂嵐が去り、ネットカフェに行く。確認しなくてはいけないことがあるんですよ。先ほどジョンとメシ食ってたときに、かれが衝撃的な発言をしていたんだ。それは、「昨日ジャイプルでBomb blast(爆弾テロ)があったぜ」ということ。調べてみると事実のようで、死者も80人となかなかの規模。俺明日ジャイプルに向かうんですけど…。果たして入れるのでしょうか。というか、行っても大丈夫なのでしょうか。。観光どころじゃないんじゃないか?いやいや、ちょうど居合わせてなくてよかったよ。

 ネットカフェでインド人青年が声をかけてきた。名をリッキーという(要注意人物)。またか、どこにでもいる、取り入ってどこかに連れていくヤクザまがいの連中ですわ。しかし俺も暇。少し付き合おうじゃないか。適当なエロ話(そればっかり)をしていると、

「マフアー(一般家庭で作っている密造酒)でも飲まないか?」
「ほほう。いいじゃないか。それは美味いのかね?」
「作ってる家によって違うが美味いところを知っている」
「うむ。連れて行きたまえ」

 というわけで、そこらの家に行く。たぶん地元の人がたまに集うような場所だろう。ちょっとしたテーブルとイスが置いてある原っぱだ。薬を盛られている可能性もあるため、リッキーが飲んだのを確認して俺もマフアーを飲む。たかられそうになったため、憤慨して割り勘にさせる。当然だろう。酒、うん、別に美味くないね。なんか怪しいし。飲みつつしばらくだべる。まあいい奴といえばいい奴かな。案の定、店に行こうぜと提案される。けっこう楽しかったので行くだけ行った。そしてすぐ出た。そして奴が本性を出す。

「俺はいろいろ教えてやったんだ。なんかおごってくれ」
「それはお前の言うことじゃないだろ。俺のハートがやることだ。それくらいわかれよ」
「じゃあせめて情報ノートに俺のことを書け」
「い・や・だ」
「たのむよ、なっ。今はローシーズンで金がねえんだよ」
「知らねえよ・・・」

 すべてを拒否したが、しっかり安くてうまいローカル屋台だけは教えてもらって宿に逃げた。楽しく飲んで喋っても結局これだと気分も悪くなる。何かとたかろうとしやがって。てめえに女ができねえのはルックスの問題じゃねえんだ。心が腐ってるんだよ。だいたい、毎日酒飲んでハッパ吸ってるんなら金あるだろが。ロクでもないごくつぶしどもが。少しはまじめに働いてみやがれ。この時、カジュラホには鉄道駅が建設中だった。年内には完成し、町は大きく発展するだろう。そして悪徳なレストランや客引き、リッキーのようなアホが増え、旅行者には評判の悪い町になるだろう。

 屋上で宿のオーナーとしばらくしゃべる。彼は日本語が話せる。日本で働いていた経験があるようで、新しい視点をもっているナイスガイ。どうりでこの宿はいいはずだよ。サービスという概念が比較的ある。スタッフが気さくで誠実。たくさん話をしたし。部屋もきれい。

 ひまだったのでチョコって、雑貨屋でお菓子を大量に買い、食い漁り、至福の刻。久々にベッドでゆっくり眠れる。旅してて一番ほっとできる瞬間。だが、あいかわらずインドには飽きてきている。苦痛といえば苦痛なんだ。旅そのものがもう、ね。。俺は今後もひたすら移動を続けるのか。ひとりの夜はいつも寂しさだってつきまとう。

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