瞑想コース始まる

 チチチチ、ピピピピ、小鳥のさえずりが聞こえるわね。目が覚めた瞬間いい気分。それがダラムサラ。わかるか?貴様らにわかるか?ダラダラぬくぬくと生きやがって。だが俺は無職。旅人などと自称してて笑える。いわゆるニート。底辺中の底辺。生きていようが死んでいようがどうでもいい存在。わかってるのか、そこのクソバックパッカーども!

 まだ7時前だけどせっかく目が覚めたので、ダラムサラの目覚めを見ようと屋上に上る。これからまさに太陽が顔を出すところ。すぐ近くに山があるため、日が出るのが遅い。今日は12時に宿をチェックアウトし、山の中に入る予定。特に早起きする理由もないんだけど、この町来てから元気でさー。

 実にいい朝だ。朝食をとり、8時にネットカフェに行く。8時にネットカフェ開いているってのがすごいよね。もちろん俺が一番乗りだ。ダラムサラのネットは1時間30Rsくらいで、速度は普通。特別遅くはないと思う。デジカメの画像をアップしつつ、音楽をDLする。この同時作業は非常に効率が悪いけど、これを読んでいる皆さんにとってはどうでもいいですよね。
 12時にチェックアウト。いつもながら、宿を出て次の目的地へ向かうこの瞬間が好き。不安と期待が入り混じるってやつだ。僕は小心者なので、できるだけ前もってリスクを減らすようにしている。時間を有効に使いたいというのもあるけど。ずしりと肩に食い込むバックパックはもう満杯でマジでクソ重い。山から下りたら荷物の一部を日本に送る。昼メシはもちろんYak。何度食ってもうまい。うますぎる。そして山ごもりのための買い出しをする。

「リンスがないわね。おじさん、リンスある?」
「ない」

 別にリンスなんかなくてもいいんだけどさ、俺の髪はかなり長く、シャンプーだけだとからまってギチギチして不快なんだよね。。まあ普段は束ねてるからそれほど問題ないけど。今使ってるシャンプーもインド製だからか、やたらと油分が落ちるんだよな。髪の毛溶けてるんじゃないの?

「歯磨き粉も切れそう。おじさん、歯磨き粉は?」
「ない」

 おい。歯磨き粉は欲しかったな。インド人みたいになんかの木の枝でみがけっての?

 これから瞑想コースに参加するため、山に入ります。ここから1時間ほど登ったところにある瞑想センターへ。サンダルからスニーカーに履き替えて。受付時間までまだ少し早いけど、クソ重いバックパックを背負ってセンターに向かって登山する。何とつらい山道か。所々で休みながらのろのろ歩くひ弱な俺。そこへ、同じく巨大なバックパックを背負って登ってくる外国人の女の子が。頭を丸めており、明らかに同じコースに参加する人だとわかった。

「ハイ、あなた日本人?あなたもセンターに行くの?」
「イエー・・・ース(Mr.オクレ風に声をひっくり返して)・・・ハァハァ…君はどこから来たの?ハァハァ…」
「フランスだよ!ところでセンターはまだ先?このへんだと思うんだけど。道間違えてるのかな」
「まだしばらく先だよ」
「えぇっ!さっき歩いてるインド人に聞いたらこのへんだって言ってたんだけど」
「またインド人はテキトーなことを…」
「ほんと、嘘ばっかりつくよね」
「ところでその頭、君は修業しながら旅してるの?」
「うん。途中で目覚めちゃってね、剃っちゃった」

 インド人は信じたらアカン。とはいってもおもしろがって嘘ついてるわけじゃないんだけどね。何とか答えてあげようとしてくれてるのはわかる。ボロボロにくたびれてようやくセンター到着。さっそくオフィスに行き、とりあえず名前をチェックしてもらう。受付はまだなんだけど、予約がちゃんと入っているかの確認。俺が到着したころにはまだ人もまばらだったが、続々と人が集まってくる。ほとんど外国人。白人も多いけど、集団ではない。単独行動の旅人ばかり。インド人は意外と少なく、数えるほどだった。やっぱ仏教は受け入れがたいのでしょうか。お坊さんも数人いた。ターバン巻いたシク教徒も数人いた。この瞑想に宗教の違いなど全く関係ないのだ。

 受付開始、まずはdiscipline、つまり要綱規律注意点を読んだかを聞かれる。まだの人は各国語で訳されている手引きをしっかり読まないといけない。日本語もある。それを読んで承諾したことを伝え、フォームを手に入れる。フォームに個人情報などを記入する。パスポート番号を記入し、ランドリーデポジット200Rsを支払い、最後に貴重品や必要のないものを預ける。コース中は書くことが禁止されているので、ノートやペンも使えなくなる。日記が書けない。

 18時からスタートということでしばらく待つ。外にはキャンセル待ちの人がかなり集まっている。ざっと30人はいた。この時期のこのセンターはかなり混むという情報を得ていた俺は、前もってベトナム滞在中にネットで申し込んでおいたのだ。
 驚いたことに、待っている人の中に知り合いがいた。とある国で出会った人。メシも何回か行った、あまりに見覚えのある人。まさかこんな所で再会するとは。旅をしていて再会するということはけっこうよくある話だけど、このような特殊な場所で再会するとはホントにびっくりする。話によると、彼は最近までネパールにいて、カトマンズの瞑想センターに行ったが満員だったためここに来たようだ。季節柄、今の酷暑期での瞑想は悲惨。だから少しでも快適に瞑想をするために、ここダラムサラやカトマンズといった比較的涼しい場所に殺到するわけだ。幸いその人はコースに参加することができた。

「オー、バーズム!」

 俺の着ていたBURZUMのTシャツを見てチリ人が反応。手で例のサタニックサイン(と勝手に呼んでいる)をしてくるので、俺もそれにサインで答える。一瞬で心が通じた瞬間。さすが南米人はこのようなものに敏感だ。

 18時、0日目がスタート。軽食をいただきました。そして19時からイントロダクションが始まる。師の肉声テープが流れ、概要や注意点が説明されるが、流暢な英語にほとんどついていけなかった…。20時からさっそく瞑想スタート。先ほどのテープがあまり聞き取れなかったため、よくわからないまま始まる。日本語のテープがあると聞いてたんだけどなー。大丈夫なのだろうか。誰かに相談したいけど、規律によってしゃべることができないんだな。不安な気持ちのまま0日目が終わる。

 瞑想センターの環境はとてもいい。でも猿が凶暴。暴徒集団ジードそのもの。寝る場所は鶏舎のようだがちゃんと硬いベッドがある。造りの問題もあり、すきま風が厳しい。夜はかなりの寒さ。メインの瞑想ホールは100人程度収容可能。インドにしてはかなり立派な施設である。これから10日間にわたり、瞑想漬けの生活が始まる。そしてこの10日間により、俺の人生は激変するのである。

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